要旨本論文では, コミュニティ・エンパワメントの手法の体系化に向けて, 地域づくりに関わる分野と都市計画分野のそれぞれについて文献レビューを行った上で, 両者を比較して論点整理を行った. このレビューでは, 2 つの分野における代表的な文献で取り上げられている手法に関して, ① 定義, ② 背景にある哲学・原則, ③ 進め方, ④ 運営に関する要約を行った. 比較の結果, コミュニティ・エンパワメントに関し, 以下の 5 つの点が明らかになった. 第 1 に, 両分野において, 住民の内発性や自発性の涵養を重視するため, フォアキャスト型の手法が大半を占めていた. 第 2 に手法の 「出発点」 で, 地域課題や地域資源の可視化が重視されていた. 第 3 に手法の 「到達点」 として, 地域づくり分野では将来ビジョンの策定までが重視されるが, 都市計画分野では, その後の制度や事業との接続が明確に意識されているという違いがあった. この点と関連して, 第 4 に, 外部の専門家や支援者の役割について, 地域の当事者に気付きを促すことに主眼を置く地域づくり分野と, 専門的な知識や技術を継続的に提供することを重視する都市計画分野という違いが見られた. 第 5 に, 両分野で個人のエンパワメントが意識されているが, 地域づくり分野では, 住民の主体性や自発性を引き出すことが手法の主目的であるのに対して, 都市計画分野では, 個人のエンパワメントを前提に組織やコミュニティのエンパワメントが重視される点に違いがあった.