当事者なのに傍観者では…「政府任せ」の東電社長、漁業者に会ったのは処理水放出の当日

2023年8月24日 20時42分
 反対の声の中、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が24日に始まった。「岸田首相や西村経済産業相が前面に立ち、一定の理解をいただいたということで放水に至った」。東電の小早川智明社長はこの日も、政府任せの姿勢に終始した。事故収束の節目となった日の東電幹部らの言葉からは、事故当事者としての責任感は伝わってこなかった。

◆「国とわれわれは一枚岩」

 小早川氏は福島第1原発で放出作業を確認した後、午後3時ごろに記者団の取材に応じた。2015年に東電と政府が福島県漁連と交わした「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」との約束を巡り、漁業者の理解は得られたのかどうかについて、小早川氏は政府が理解を得たと判断したと説明。「国とわれわれは一枚岩」と、政府に追随する姿勢をあらわにした。

海洋放出開始後に福島第1原発からの中継で作業状況を説明する東京電力の小早川智明社長(中)=東京都千代田区で

 小早川氏は、21年4月に政府が海洋放出の方針を決定後、反対する漁業関係者に直接会っての説明をしてこなかったが、放出当日になってようやく県漁連を訪れ「当社の決意と覚悟を伝えた」という。

◆「東電としての認識は?」との質問に

 放出作業を説明する午前中の記者会見では、処理水対策の責任者を務める東電福島第1廃炉推進カンパニーの松本純一氏が登壇。漁業者の理解を問われると「大きな問題だから、政府が前面に立ってくださって対処していると考える」と説明。東電としての認識を記者が質問しても「政府の判断に従った」との趣旨の言葉を繰り返した。
 東電は当初、小早川氏の取材は福島第1原発でだけ対応する方針だった。だが原発と福島市、東京の本店を中継でつなぎ、各会場で質問を受け付けた午前の会見で「社長は取材を受ける気がないのでは」と指摘され、各会場を中継する方式とした。(小野沢健太)

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