「地域ポイント」で実現 住民が主役、自助・共助のまちづくり

愛媛県西条市で公民共創によるまちづくりに取り組むNTT西日本と地域創生Coデザイン研究所。地域ポイントや地域活動の貢献を見える化する仕組みをパートナーと創り上げ、住民の行動変容を促し、地域コミュニティ活動と地域経済活動の両輪によるWell-beingの向上をめざしていく。

シビックプライドの醸成がカギ

人口約11万人を擁する愛媛県西条市は、西日本最高峰の石鎚山や瀬戸内海に囲まれた温暖で風光明媚な地域だ。多種多様な農作物の一大産地でありながら、多くの製造業が立地し、四国最大規模の工業地帯を成している。また、「住みたい⽥舎ベストランキング」(宝島社)若者世代部門で3年連続の全国1位を獲得するなど、近年は暮らしやすさも魅力の一つとなっている。

一方、少子高齢化が急速に進行しており、いかに関係人口を創出し地域の力に変えていくかが課題になっていた。そこで、西条市は以前から移住促進に注力しており、その甲斐あって移住者は増加傾向が続くも、人口減少自体を食い止めるには至っていないのが現状だ。

そうした中、西条市とNTT西日本は2020年6月に「ICT利活用による地域活性化連携協定」を締結し、持続可能なまちづくりを進めている。

「『持続可能な西条市』の実現には、行政からの公助のみに頼るのではなく、住民による自助・共助が必要です。また、住民と行政による協働と共創のまちづくりが求められます。そのようなまちづくりを推進するためには、シビックプライドを醸成して住民の行動変容を促すことが重要であり、その仕掛けづくりとしてICTを活用してお手伝いしたいと考えています」とNTT西日本四国支店長の立石篤志氏は話す。

立石 篤志 NTT西日本 四国支店長

地域ポイントによる行動変容

2018年に開始した「わくわく健康ポイント事業」では、住民が歩数計やスマホアプリを活用し、ウォーキングや健康診断の受診などの健康活動を通じて「健康ポイント」を獲得するもので、2020年からは貯まった健康ポイントを「地域ポイント」として市内の店舗で利用できるようにした。

「『外出の機会が増えた』『運動習慣が身についた』などの声が上がり、健康に関する行動変容によって、多くの参加者の健康が増進されました。西条市からは、当年度の事業において一定の医療費削減効果を得られたとも伺っています」と立石氏。

 本事業に参画する地域創生Coデザイン研究所の赤阪祐二氏は次のように話す。「西条市は、地域コミュニティ活動と地域経済活動の両輪を回す先進的な取り組みをされています。地域ポイントが、地域の活動を活性化させ、循環することによって経済も活性化する“地域の血液”のような役割を担っています。健康活動をスタートとし、子育て、福祉、ボランティアや環境などのSDGs活動と連動させることにより、多くの住民の共感を得て、自助・共助のまちづくりが加速するものだと考えています」

さらに西条市では、地域活動の貢献を見える化する仕組みを取り入れており、住民のモチベーション向上とシビックプライド醸成を図りつつある。また、地域ポイントを活用できる店舗の拡大に向けた仲間づくりも加速中だ。「全国的に広く知られている電子マネーと異なり、地域ポイントは地域にデータが資産として蓄積されやすくなるため、住民の関心やニーズなどのデータから新しい価値を創出する『地域DX』につながると考えています」と赤阪氏。

赤阪 祐二 地域創生Coデザイン研究所 担当部長

立石氏は次のようにも話す。「最終的な目標は、自助・共助の取り組みを持続可能なものにすることであり、さまざまな社会課題に資する取り組みを進め、トータルで事業継続する仕組みを構築しなければなりません」

SDGsを旗印に地域課題全般の解決に向け、さまざまなパートナーとの協業が進んでおり、2022年1月に西条市、伊予銀行、愛媛銀行、西条産業情報支援センターとともに「⻄条市SDGs推進協議会」を発足した。活動に賛同する仲間をパートナー法人として募ったところ、名乗りを上げた企業は300社を超え、地域包括ケアやモビリティなどのテーマで複数の事業構想が動き出しているという。

「西条モデル」を他地域へ展開

同事業で培った地域ポイントを活用したまちづくりモデルを展開することによって、地域活性化に貢献できると地域創生Coデザイン研究所は考えている。「同じような背景や課題をもち、住民が主体となったまちづくりを試みている市町村は増えつつあると感じています。今回の取り組みをひとつのモデルとしつつ、健康、福祉、環境、観光や一次産業の活性化などの課題に対し、地域の特色にあわせたまちづくりを進め、Well-beingの向上に寄与したいと考えています」(赤阪氏)

図 住民参加のまちづくりモデル

出典:地域創生Coデザイン研究所

地域コミュニティ活動と地域経済活動を両立すべく、ICTを活用した同社の地域活性化の取り組みは、西条市と同様の課題を抱えるさまざまな地域に広がっていくことだろう。

地域活動をおこなうことでもらえる「LOVE SAIJOポイント」(左)、地域活動の貢献状況が見える「SDGsメーター」(右)

 

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