その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はブリアンナ・ウィーストさんの 『感情戦略』 です。

【日本語版はじめに】

 本書を開いてくださり、ありがとうございます。

 この本を手にしてくれたのは、感情のコントロールをしたい、と思ったからでしょうか。

 あるいは感情に振り回されないことにはある程度自信があるけれど、手ごわいところもあるから、もっと知りたいと思ったからでしょうか。それとも、なんとなく「感情」って不思議だな、と思われているからかもしれません。

 この本の原題は「The Mountain Is You」、つまり「山はあなた」というタイトルです。山とは、自分自身の問題のこと。それも山のようにそびえたち、克服するのが難しい問題のことです。

 あなたには「これをした方がいい、あるいはやめた方がいいと分かっているのに、どうしてもできない問題」はありませんか?

 あるいは、自分にとってよくないと分かっているのに、気づくとなぜかいつもしてしまうことはありませんか?

 ダイエットや運動、転職や貯金や投資、結んだ方がいい、あるいはもうやめた方がいい人間関係、部屋の片づけ、ものを書いたり、音楽をつくったりという夢のためにやるべきこと、忙しすぎる仕事を少なくして休みをとること、健康診断にいくこと、深刻なところでは依存症など、何かしらあるはずです。これは、あなただけではなく、人間ならだれしもあるでしょう。

 この本では、そういう行為を「自己破壊的行為」と呼んでいます。

 あなたが自己破壊的行為をしてしまうのは、「怠惰だから」でも「無能だから」でもありません。できないのは、もっと別のところに理由があるからです。その理由を探さなければ、「すばらしい」人生にはなりませんが、結局それができないまま人生を終える人も多いでしょう。

 自己破壊的行為をなぜしてしまうのか。それを覆い隠しているのは、感情です。

 感情は、たいへん巧みです。

 本書には、感情がどれほど人間をさりげなく操るのかが書かれています。

 私たちは、「安心感」を求めたり、過去に受けた傷を見ないようにしたり、はたまた自分が今味わっているつらい感情を見ないためなら、なんでもします。

 もしかして、自分は大丈夫だ、と思う人もいるかもしれません。

 しかし、本書を読めば分かるのですが、感情はあまりにもさりげなく私たちを動かすがゆえに、感情がどういうことをしているのかという知識や、どう向き合ったらいいかというテクニックを知らないと、結局自分の本当にやりたいことも分からず、おくりたい人生もおくれないことになりかねません。

 「自分の心の赴くままに行動するべき」だなんて、ウソです。なぜなら、人間は快適なところにいたがるものだからです。それが実は自己破壊的であるかもしれなくても。やはり理性で決断し、戦略を立てて、それを実行する生き方が人生を最高にします。

 あたりまえのことですが、このあたりまえのことをすることが、どんなに難しいか。感情のむずかしさを知れば、きっとお分かりいただけると思います。

 本書は、2020年にアメリカで刊行され、ソーシャルメディアなどで紹介されて人気となりました。また、アメリカのCBSニュースで「アマゾン・ベストセラーから選ぶおすすめ自己啓発書10冊」の1冊として紹介されたり、フォーブス誌で紹介されたりしています。

 現在はアマゾンやソーシャル・リーディング・サイトの「グッドリーズ」などで、数多くの高い評価がついています。さらに、本書での学びをより深く理解していかしたいと考えたファンによって非公式の「ワークブック」も何種類もつくられています。

 この本には、自分の感情とのつきあいかたを知れば、本当の自分らしい人生を生きられる、と書いています。

 ただし、その変化は劇的に運命のように訪れるのではなく、マイクロシフトで変わります。

 本書の内容は、読んでいる間はピンとくるところもあればこないところもあるかも
しれません。

 しかし、ピンとこなかったことも後から、思わぬところで「これがそうだったのか」というひらめきを、マイクロシフトとともにもたらしてくれるでしょう。

 この本が、あなたの本当の人生を生きる手助けになったらこれ以上嬉しいことはありません。

「感情戦略」編集チーム
編集・中野亜海、翻訳・松丸さとみ


【目次】

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