進むか 気候変動対策 11月COP28 注目される「進捗点検」 温室ガス、日本に追加削減も

2023年10月9日 14時30分

昨年11月、エジプト北東部シャルムエルシェイクのCOP27会場で、温暖化対策の強化を求める環境活動家たち(蜘手美鶴撮影)

 地球温暖化対策などを話し合う国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が11月末、中東の産油国アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで始まる。今回の目玉となるのが、世界全体の温室効果ガス削減の進捗(しんちょく)などを点検する会合「グローバルストックテイク(GST)」の初実施だ。日本を含む各国でさらなる対策強化が必要となる可能性もあり、行方が注目される。(蜘手美鶴)

◆強い危機感

 「持続可能な未来を確保する機会が急速に失われつつある」。国連は9月上旬、気候変動対策の根幹を担う国際条約「パリ協定」の目標達成状況をまとめた報告書を発表し、各国にこう警告した。温暖化を食い止めるため、石炭火力の使用を2019年比で30年までに67~92%削減することや、発電源としては50年までに「事実上廃止」することにも言及。「あらゆる面でいっそう対策が必要となる」と強い危機感を示した。
 この報告書を基に実施されるのが、COP28のGSTだ。各国は現在、パリ協定に基づき、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1・5度に抑える対策を進めるが、報告書は「不十分」と指摘。GSTの進捗評価を経て、COP28では温室効果ガス排出量が多い先進国と、気候変動の影響で苦しむ途上国との間で激しい議論が予想される。
 世界の気温は上昇が続き、欧州連合の気象機関「コペルニクス気候変動サービス」は、7月の世界の平均気温が観測史上最高だったと発表。高温の影響で、各地でより激しいハリケーンや熱波、洪水などが起きている。「気候変動対策は待ったなし」(国連)の状況で、専門家らは、GSTにより、COP28でより高い温室効果ガス削減目標などが打ち出されることを期待する。

◆日本への影響は

 GSTの結果次第では、日本は温暖化対策を見直す必要に迫られる可能性もある。日本は現在、国連に提出した温室効果ガスの排出削減目標(NDC)として、50年までの排出実質ゼロ実現のため、30年度までに13年度比で46%の削減を打ち出している。COP28の成果文書に温室効果ガスの削減強化を求める提言などが盛り込まれれば、NDCの目標見直しは必至だ。
 環境省の担当者は「すでにかなり厳しい目標を掲げており、これ以上求められることはないのでは」としつつも、「成果文書の内容を受けて、新たな取り組みを検討しなければならない可能性はある」と語る。

◆化石燃料の行方

 また、温暖化を食い止めるため、COP28では化石燃料の使用量削減に向けた議論にも注目が集まる。英グラスゴーで開かれたCOP26では、各国が「石炭火力発電の段階的削減」で合意したが、翌年にエジプトであったCOP27では議論は停滞。「すべての化石燃料の段階的廃止」で合意を目指す動きもあったが、サウジアラビアなど産油国が強く反対したとされる。
 そんな中、今回の議長国UAEは、産油国でありながら再生可能エネルギーの導入を促進するなど、「脱石油」に力を入れることでも知られる。「議長国の意向は最終合意を左右する」とも言われ、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之・自然保護室長は「UAEは石油以外の経済を模索しており、『化石燃料の段階的廃止』に向けた議論をリードしやすい立場にある」と期待する。

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