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大手電力が、火力発電所の「次世代化」を急いでいる。化石燃料を使う火力発電は二酸化炭素(CO2)の排出量が多いとされ、脱炭素の観点から対応が不可欠なためだ。燃やしてもCO2を排出しない水素やアンモニアを燃料に混ぜる手法が柱で、各社は早期の実現に向けて実証実験に乗り出している。
中国電力は、柳井発電所(山口県柳井市)の一部設備の建て替えに向けて9月に公表した「計画段階環境配慮書」で、燃料の一部に水素を使う方針を示した。液化天然ガス(LNG)が燃料の2基を廃止して2030年3月に最新鋭のガスタービン式の設備(出力約50万キロ・ワット)を導入する計画で、中国電として初めて、燃料の一部に水素を使えるようにする方針だ。
建て替えで年間約20万トンのCO2削減につながり、中国電は「水素燃料の導入が実現すれば、さらに多くのCO2を削減できる」と期待する。
沖縄電力は今年度にも、沖縄県中城村のガスタービン発電所(出力3万5000キロ・ワット)で、燃料に水素を混ぜて発電する実証実験を始める方針だ。
火力発電は大手電力にとって主力級の発電設備だが、石油やLNG、石炭が燃料のため、脱炭素化への対応が急務となっている。水素は製鉄所などの生産過程で発生するため比較的入手しやすいなどの特徴があり、大手電力が相次いで導入の検討を進めている。
水素と同様の性質を持つアンモニアに目を付けたのは、九州電力だ。
熊本県苓北町で運転する石炭火力の苓北発電所1号機(出力70万キロ・ワット)で4月、燃料にアンモニア0・1%を混ぜて運転する実証実験を行った。「燃焼状態は安定していた」(広報)といい、11月には、同じ石炭火力でより大型の松浦発電所2号機(出力100万キロ・ワット、長崎県松浦市)でも実験を始める。影響がなければ、混ぜる割合を徐々に増やす考えだ。
水素やアンモニアの活用は、脱炭素化につながる重要な取り組みとして政府も着目しており、21年に策定したエネルギー基本計画では、30年度の電源構成のうち1%を、水素やアンモニアを活用した発電とする方針を打ち出した。
ただ、実用化には、受け入れ体制の整備やコストの低減などの課題を乗り越える必要もある。電力業界には、世界的な脱炭素化の流れを踏まえ、技術確立に向けて一段と対応を加速する姿勢が求められそうだ。