IEAのファティ・ビロル事務局長。
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- 国際エネルギー機関(IEA)は9月26日に「ネットゼロ・ロードマップ」の最新版を発表し、地球温暖化抑制を実現するのはかなり困難になってきていると述べた。
- IEAは、世界が気候変動目標を達成するには、2030年までに化石燃料需要を25%減少させる必要があるとしている。
- さらに、2050年までには80%減少させなければならないと見込んでいる。
国際エネルギー機関(IEA)が2023年9月26日に発表した「ネットゼロ・ロードマップ(Net Zero Roadmap)」の最新版によると、各国政府は、地球温暖化による気温上昇を1.5度に抑えるために、2030年までに世界の化石燃料需要を25%削減しなければならないという。
さらに、2050年までには化石燃料の需要を80%減少させる必要があるというのがIEAの見解だ。そのレベルまで需要が減少すると、世界はもはや石油やガスの新規プロジェクトのほとんどを必要としなくなり、石炭採掘の新規事業も必要なくなる。
IEAのファティ・ビロル(Fatih Birol)事務局長は、次のように述べている。
「地球温暖化による気温上昇を1.5度に抑えるという目標を維持するには、世界が迅速に一致団結する必要がある」
「我々が強く伝えたいメッセージは、目標達成のためには強力な国際協力が不可欠だということだ。今直面している課題の大きさを考えると、各国政府は気候と地政学的問題を切り離す必要がある」
クリーンエネルギー分野の技術向上は有望だが、気候の目標を達成するにはさらなる勢いが必要だとIEAは主張している。化石燃料の効率化と代替エネルギーへのさらなる投資が、需要の抑制につながるだろう。ロードマップでは、世界の再生可能エネルギー発電能力が今後6年間で3倍になると予測している。
開発途上国が代替エネルギー源を構築する時間を確保するには、先進国がより早くネットゼロに到達する必要があるとIEAは指摘している。
全世界がネットゼロに到達するには、年間約450億ドル(約6兆7200億円)の投資が必要であり、ほぼすべての国が「目標とするネットゼロの時期を前倒し」しなければならない。ロードマップによると、世界のクリーンエネルギーへの支出は、2023年には年間1兆8000億ドル(約270兆円)だったが、2030年までに4兆5000億ドル(約670兆円)に増加させる必要があるとしている。
9月初め、ビロル事務局長はフィナンシャル・タイムズのコラムで、石油、ガス、石炭の3大エネルギー源に対する世界の需要は、2020年代でピークを迎えると記した。化石燃料需要の「一見絶え間ない成長」の時代は、終わりの始まりを迎えているという。
「新たな気候変動政策は考慮に入れず、現時点における世界各国の政府による政策だけに基づいたとしても、3つの化石燃料の需要はそれぞれ今後数年でピークに達すると予測される。各燃料の需要のピークが見えるのは初めてのことであり、これは多くの人々が予想していたよりも早い」
このロードマップは、アメリカや世界での原油価格が2023年後半に急騰を続ける中で発表された。9月27日、アメリカの原油価格は2023年の最高値を記録し、国際原油価格は1バレルあたり100ドルという閾値に近づいた。