米軍横田基地で1月にも高濃度PFAS漏出事故があったと判明 泡消火剤に汚染された水760リットルが…

2023年11月14日 06時00分
 発がん性の疑いがある有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)を含む泡消火剤約760リットルが今年1月、米軍横田基地(東京都福生市など)で漏出していたことが、政府関係者などへの取材で分かった。防衛省の聞き取りに在日米軍が事故の事実を認めたという。この消火剤はPFASの国際的な規制を受け米軍が導入を進めてきた代替品だったが、PFASの一種であるPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)が高濃度で検出された。(松島京太)

◆米軍「基地外への流出はなかった」

 関係者によると、今年1月25、26日、基地内のショッピングモールの物販搬入口で、消火用スプリンクラー設備が破損、PFASを含む泡消火剤に汚染された水約760リットルがコンクリートなどの地面に漏出した。

米軍横田基地

 汚染水が側溝に流れ込んだため、基地外へとつながる基地西側の福生市の排出口をふさいで対処した。地面上に広がった汚染水は吸収材などで拭き取った。米軍は「基地外への流出はなかった」と説明しているという。回収された汚染水のPFAS濃度を調べたところ、PFOSとPFOAの合計値で、最も高くて1リットル当たり264万ナノグラムで、地下水や河川の国内の暫定指針値の5万3000倍だった。

◆PFAS「含有しない」代替品を使っていたのに検出

 PFASに詳しい京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「コンクリートのひび割れや接ぎ目から土壌に浸透し、地下水を通じ基地外の地域に影響を及ぼす懸念がある」と指摘する。
 横田基地広報部は本紙の取材に「環境への責務として、関連するすべての合意・義務・手順を引き続き順守していく」とメールで返信し、事実関係の回答を避けた。防衛省の担当者は「現段階では情報がないので答えられない」とした。
 横田基地では、2010〜12年に高濃度のPFASを含む泡消火剤が大量漏出。PFOSやPFOAを規制する世界的な流れの中で、米軍は「含有しない」とされる代替品に置き換えを進めてきた。だが今回の事故は代替品によるもので、代替品にも高濃度で含まれていた可能性がある。

 PFAS 泡消火剤やフライパンの表面加工などに使われてきた有機フッ素化合物の総称。4700種類以上あるとされる。代表的なPFOSやPFOAは人体や環境への残留性が高く、腎臓がん発症や胎児・乳児の成長阻害、コレステロール値上昇、抗体反応低下などの健康被害と関連性が指摘され、国際的に規制が進む。国内ではPFOSが2010年、PFOAが21年に製造・輸入が原則禁止された。

   ◇    

◆「実際はPFOSとPFOAを使用し続けている」

 米軍横田基地(東京都福生市など)内で今年1月に漏出した泡消火剤は、世界的にPFOSやPFOAの健康被害が問題視される中で、代替品として導入が進められてきたものだった。防衛省によると、米軍は代替品について「PFOSとPFOAは含まれていない」と説明してきたが、今回の事故で汚染は解消できていない可能性が出てきた。
 「米軍は『環境に優しい泡消火剤だ』と主張しているが、実際はPFOSとPFOAを使用し続けている」。今回の事故を受け、政府関係者はそう実情を打ち明けた。
 在日米軍は2016年、消火訓練で従来の泡消火剤の使用を停止。20年から代替品「AFFF-C6」への設備交換を始めた。ただ、本紙が米軍の文書から製品説明を見ると、PFOSとPFOAがそれぞれ1リットル当たり最大80万ナノグラム含まれていると記されていた。
 20年にはC6の泡消火剤が基地内で漏出した事故が3件発生。防衛省によると、米軍は日本政府に「PFOSとPFOAは含まれていない」と回答していた。本紙は在日米軍に代替品について問い合わせたが、期限までに回答はなかった。
 また今回、高濃度で検出された理由として、従来品で汚染されていた配管を使った影響も指摘される。京都大の原田浩二准教授は「十分に洗浄しないまま過去の配管を使用すると、残ったPFASが溶け出して二次汚染が起きる。代替品に切り替えても新たな漏出や汚染の懸念は消えない」と指摘する。

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