川内原発1、2号機の60年稼働を認可 原子力規制委員会
原子力規制委員会は1日の定例会合で、九州電力の川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転期間を最長20年間延長することを認可した。60年間の長期運転が可能になる。九電は全4基が安定して稼働する状況につなげ、経営の改善を図る。
原発の運転期間は2011年の東京電力福島第1原発事故後、原則40年に制限された。規制委が認可すれば1回に限り最長20年間延長できる。これまで関西電力高浜1、2号機、美浜3号機(いずれも福井県)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)で認められた。今回は5、6基目となる。
川内原発は1号機が24年7月、2号機が25年11月に運転開始から40年を迎える。出力はいずれも89万キロワットで、九電の供給力の1割程度をまかなう。九電は22年10月に規制委に申請し、審査で大きな問題点は出ていなかった。
原発全4基の稼働が九電の業績を支える。23年3月期は玄海原発(佐賀県玄海町)でテロ対策施設の完成が遅れ、4基の稼働率が約57%にとどまった。24年3月期は稼働率が約90%まで上昇することで経常利益を1290億円押し上げ、23年3月期の最終赤字から脱する見通し。火力発電に使う燃料費を抑えることができる。
原発の稼働は電気料金にも反映される。原発は発電コストに占める燃料費の割合が火力発電に比べて低く、燃料費高騰による発電コストの上昇を避けられる。九電は原発をフル活用することで、他の大手電力で相次いだ規制料金の値上げを当面見送れるとみる。
政府は稼働から60年超の原発の運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」を25年6月に施行する。事業者は施行に合わせて再び規制委の審査を受ける必要がある。
川内原発に関しては、鹿児島県の住民団体が6月から2カ月間、県民投票条例の制定に関する署名活動を実施した。10月4日に請求書と署名を塩田康一知事宛てに出した。直接請求に必要な有権者総数の50分の1(約2万6500筆)より約8割多い4万6112筆を集めた。
請求を受けて同23日から臨時県議会が開かれた。議会では、県民投票の法律的な影響力を問う意見や、20年延長することの安全性についての意見などが出た。26日の本会議で県民投票条例案が反対多数で否決された。
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