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更新日:2020年3月26日

移動販売がやってくる音

移動販売がやってくる音

「うちの庭で買い物ができる楽しみ」それが受け入れられているんでしょうね。(PDF:268KB)

 

ハァ 細葉しゃくなげ 深山のつつじよ~ サノサッサ

どこか懐かしさを感じさせるメロディが風に乗って聞こえてくる。そう「龍山音頭」のメロディだ。その音が聞こえたら、みんな集まってくる。みんなそれを待っている。週に一度のお楽しみ。やがて移動販売のトラックが姿を現す。

龍山町の移動販売

ここ天竜区龍山町は、人口700人弱。過疎、高齢化が深刻な課題となっている地域だ。さらに、集落は山を登った先にあることが多く、買い物へ出掛けるのもひと苦労だ。
そんなこの地域では、買い物の手段の一つとして移動販売が行われている。移動販売といって真っ先に浮かんだのは石焼き芋の掛け声くらいなものだったが、ここの移動販売は、まさに「何でも屋さん」である。そして、物を売るだけではない、この地域特有の役割を担っている。


そんな移動販売の様子に密着した。

 

山里に現れる青空マーケット

移動販売は、集落毎に、週一回やってくる。この日、移動販売がやってくるという集落を訪ねると、そこにはすでにお客さんが待っていた。畑の脇にある大きな石の上に二人で腰掛け、甘夏をゆっくりと時間をかけて食べている。これだけでも、絵になる風景だ。「食べんかね。ちょっと、すっぱいけど」と、見ず知らずの私に笑顔で甘夏を勧めてくれた。

そこでのんびりと話をしているうちに周囲の静寂を破って、遠くからかすかにメロディが聞こえてくる。その音は徐々に近づいてくる。そう、このメロディこそが噂の龍山音頭である。
と、次の瞬間。さっそうと軽トラックが広場に現れる。トラックから、手際よく品物が運び出され、並べられていく。あっという間にそこはお店へと早変わりしていた。気がつくと、最初は2人だったお客さんが、1人、また1人と増え、5人ほどに。皆、おのおの品物を手に取っては買い物かごへ入れていく。夕食の材料、不足してきた雑貨・・・。周りが山や畑に囲まれていることを除けば、スーパーマーケットで良く目にする光景だ。

 

「毎週こうやって来てくれるから本当に助かってるのよ。みんなで集まって買い物ができる。そういえばあそこの家の人は今日は来てないねぇ」そんな会話も聞かれた。
全員の会計が終わると、品物は再びトラックに収められた。そして車は、次の場所へと向かう。辺りは、再び静寂に包まれた。

地域への感謝の気持ち

この移動販売を行っているのは、龍山町の瀬尻という地区で商店を営む片桐さん。この商店の三代目だ。「自分が子供の頃からお世話になっているお客さんが、ご高齢になって、買い物に来れなくて困っている。昔からのお得意さんを大切にしたいと思って、移動販売に行き着いたんだ」ときっかけを語る。「昔は、注文をとって配達するっていうことをやったんだけど、『買い物』ができるようにしたいと思ってね。見る楽しみ、選ぶ楽しみも大切だと思うからね。それが受け入れられてる理由でもあると思うよ。」

「見守り」という役割

さらに、片桐さんの移動販売は「高齢者の見守り」を兼ねていることが特徴的だ。この見守りは、地元のNPO団体の事業の一環として行われているものでもある。「お得意さんが出て来ない日はやっぱり心配でしょう。家の中でどうかしてるんじゃないかって。だから、そんなときは家まで行って声を掛けるんですよ」

龍山町では高齢者のみの世帯も珍しくはない。そんな地域の皆さんが、健康で暮らしているかどうか、見守る役割もこの移動販売では担っているのである。
「あとは、お客さんとの会話も大切。世間話をしたり、近況を報告し合ったり。あそこの人がどうした、こっちの人がどうしたって、連絡係も兼ねているかな」
お客さんも買い物や世間話を楽しんでくれるという。「やっぱり、車を運転できない人が喜んでくれるね。いつも待っていてくれるんだ。『うちの庭でこんな買い物ができるなんて』ってね」

移動販売のこれからを思う

「やっぱり休んじゃ悪いなぁって思うでしょ。みんな困っちゃうと思うと。でも身は一つだからね・・・」と、片桐さんは、これからのことも考える。「今のうちに、誰でも配達できて、週の回数も増やせるような仕組みを作ることができればね」とこの地域での移動販売のこれからのことを話す片桐さんの目は真剣だ。

片桐さんの目標は、遠くへ出掛けないと買えないものをこの移動販売でも不自由なく買えるようにすることだ。そのためには、まだまだ具体的な方法について検討を重ねていかなくてはならない。しかし、この地域で暮らす人のことを考えれば、この目標は、切実だ。


買い物の楽しみを、この山里でも味わうことができるように。
今日も「龍山音頭」のメロディを響かせて、片桐さんの車は、買い物を楽しみに待つ、たくさんの人のもとへ向かって走っている。


 

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