<社説>平和に関する世論調査 戦争を起こさない構想を


社会
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 日本が今後、戦争をする可能性があるとした人が「大いに」「ある程度」合わせて49%に達した。この4年間で32%、41%、48%と増加を続けている。日本が核攻撃の対象になることが「あり得る」とした人は74%に上った。本社加盟の日本世論調査会の平和に関する全国郵送世論調査の結果だ。

 「戦争は絶対にしてはならない」という歴史の教訓以上に、不安や危機感が強まっているのだろうか。戦争の可能性があると考えるのなら、それを現実にさせない努力こそが必要だ。
 ロシアのウクライナ侵攻が2年目に入り、いつ終わるか分からない状態だ。ロシアは核兵器使用をちらつかせ、隣国ベラルーシに戦術核を移転させたという。北朝鮮は核開発に躍起で、中国の軍事力増強も進む。そんな中で高まる国民の危機感が、調査に表れたといえよう。
 今回の調査では、今後10年以内に核兵器が戦争で使われる可能性があるかどうかについても聞いた。「大いに」「ある程度」を合わせて「ある」が、昨年より5ポイント増え64%だった。
 核兵器禁止条約については昨年と同じ61%が「日本は参加するべきだ」とした。その理由は「唯一の戦争被爆国だから」が最多の62%、「核兵器廃絶につながるから」29%、「核抑止力には効果がないから」6%だった。「参加するべきではない」と答えた37%が挙げた理由は「核兵器廃絶につながらない」が最多の49%、「米国の核抑止力は必要だから」34%、「日本も核兵器を持つべきだから」6%だった。
 日本政府が基本姿勢とする核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」の非核三原則については、「堅持するべきだ」と回答した人が、昨年から5ポイント上昇して80%に達した。
 これらの結果から、国民の多くは、核兵器を廃絶したい、平和国家であり続けたいという願いと、核抑止力を含む軍事力に頼らざるを得ないという迷いの中にあるように見える。だからこそ、重要なのは、軍事力に頼らずに平和を構築する構想だ。
 核抑止力とは、核による報復を恐れさせて相手を抑止する威嚇効果である。相手が核兵器を持っている場合、それは自国民多数が核攻撃の犠牲になることを覚悟することが前提だ。それを同盟国にも適用するのが「核の傘」である。しかし、相手がそう思わなければ抑止は破れる。偶発的な事故も起こり得る。核戦争を起こさないためには、核廃絶が必要なのである。
 軍事力を軍事力で抑止しようとすれば際限のない軍拡競争になる。そうではなく、外交によって、戦争をしないという「信頼」を共有することで平和を実現すべきだ。戦後78年の8月を、戦争の実相を学び、戦争をしない平和の構想を考える時にしたい。