殺傷能力のある武器輸出は「可能」…与党協議で政府が見解提示 国会で議論せず世論も無視

2023年8月24日 06時00分
 政府は23日、防衛装備品の輸出ルールの要件緩和に向けた自民、公明両党による与党協議で、現行ルールで認められた「警戒」などの活動目的に当たれば、殺傷能力のある武器の輸出は可能とする見解を示した。従来は輸出できないとしてきた説明を変更した。英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発の武器について、日本から第三国への輸出を解禁したいとの考えも説明した。

◆世論調査では反対意見が多数

 与党側はいずれも大筋で賛同している。政府との間で正式に合意すれば、平和憲法に基づき国際紛争を助長しないという理念のもと、武器輸出を抑制してきた従来の政府方針を転換し、殺傷武器の輸出へ道を開くことになる。
 世論調査では殺傷武器の輸出解禁に反対意見が多いにもかかわらず、国会での議論を経ずに政府・与党のみで結論を急ぐ姿勢に、批判が集まるのは確実だ。

◆「5類型に必要な武器の搭載は認めうる」

 防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転3原則」では、国際共同開発品を除いて、輸出できるのは「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型の活動用途に限定。政府側も国会答弁で「5類型に直接人を殺傷することを目的とする装備移転は想定されない」などと説明してきた。
 政府が今回改めて考え方を整理した結果、警戒や監視目的における相手の艦船への停船射撃用の機関銃や、掃海目的で機雷を除去するための弾薬を搭載した艦船など、「5類型に必要な武器の搭載は認めうる」と判断した。解禁された場合の輸出先は、シーレーン(海上交通路)防衛に当たるインド太平洋地域の国々が想定される。
 与党協議メンバーの一人で、公明党の浜地雅一衆院議員は一例として「停船を求めないといけない時に警告射撃をしたり、船体に当てたりする砲は必要」と説明した。
 次期戦闘機など、国際共同開発品の日本からの第三国への輸出に関して、日本から輸出ができないと販路拡大に影響するなどパートナー国との関係に支障が出るとして、「直接移転できるようにすることが望ましい」との考えを示した。今後、第三国に渡った場合に適正管理が担保される仕組み作りについて政府・与党で議論する。

◆「紛争助長につながる恐れ」

 林吉永元空将補は取材に「殺傷兵器を輸出することになれば、内戦に使われたり、紛争助長につながったりする恐れがある。輸出先の国と敵対する国から日本が敵視されるなどデメリットもあり、国民を巻き込んだ議論をしないといけない」と指摘した。(川田篤志)

 防衛装備移転三原則 事実上の武器禁輸措置を取っていた「武器輸出三原則」を見直し、2014年に策定された武器輸出のルール。その運用指針では、殺傷能力のある武器の輸出は日本と共同開発・生産した相手国と、その相手国が第三国に輸出する場合のみ容認している。相手国には日本の事前同意を義務付けている。政府は、昨年末に閣議決定した安保関連三文書で「防衛装備移転の推進」を掲げ、要件緩和に向けた与党協議が今年4月から始まった。

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